洋書ロマンス小説を読めるようになりたいブログ ☆英語の多読☆おすすめ

英語力がないけれど洋書ロマンス小説を読んでおります♡ 英語力無しで読んだ手ごたえを気ままに綴っております。

2019年09月

Sparrow (L.J.Shen)

最近ハマっているL.J.Shenさんの単発作品。
9月末に邦訳が出るので、それまでに洋書を読んでおいて、邦訳文と比較したら、翻訳テクも学べて楽しいかなと思って、読んでみました。

この作品、ロマンス成分は少なめなのですが、かすかなロマンス成分が燻し銀のようにきらめいているという、不思議な魅力のある作品。魅力的。すごく、いい。
文体は、最近読んでいたSinners of SaintシリーズよりもLJ成分少なめのシリアス調で、読みやすかったです。(慣れたのかな…?)

読書期間:2019/09/13~2019/09/19
所要時間:12時間
ページ数:302

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邦訳本が出ているため、ここにあらすじを書く必要性を感じないので、ほんの少しだけ感想をメモしておきます。

L.J.シェン作品の中では異色作で、意欲作だと思いました。
チラリズムロマンス(ロマンス成分が微少なダーク系ロマンス風サスペンス風夫婦小説)なので、王道ロマンスを期待して読み始めると、王道設定から大きく外れるストーリー展開に意表を突かれるかも。(実は初めから両片思いだったとか、犯罪を犯すまっとうな理由があったというような、ベタな話ではない。)しかもロマンス小説らしい品行方正なヒーローとは真逆のタイプのトロイの人格にも意表を突かれます。でも、すでに「Vicious」でL.J.シェン作品の虜になっているファンにとっては、他作品の補完的に楽しめる作品になっています。LJさんの世界観の楽しみ方がわかっている方には、ものすごく楽しい。
そういう意味で、なぜこの作品が邦訳1作目なのか不思議です…。(私ならば、邦訳1作目は、LJ作品初心者向け「Vicious」を推したい…!) 

マフィアのドンの跡取り息子(つまようじを愛用)が本意ではない結婚をするところからストーリーは始まります。
LJさんのいつもの作品とは異なり、悪党が悪党にならざるを得なかった過程や葛藤やロマンスの心理描写はあえて削ぎ落とされ、読者の妄想に委ねられています。(もしその部分が書かれていたら、ありがちなぬるいダーク系ロマンス小説になってしまったのでは…)
そのためハード路線のマフィアフェチ向け小説となっていて。ハードなマフィア小説の中で微少ロマンスが相乗効果できらめいてみえる異色な作品となっています。真っ暗闇の中で目を凝らしてみるとかすかにきらめく星のような微糖ロマンス。羽を切り取られたスパロウ(雀)が描かれた洋書の表紙のように、真っ暗闇に放り込まれたH/Hが希望を見いだしていくという刹那的な雰囲気を味わう作品だと思いました。斬新!!斬新すぎて、好みが分かれそうだけど…私は、好き…♡
(ちなみに三島由紀夫作品や谷崎潤一郎作品みたいな、ほの暗い恋愛が好きなタイプです。)

ヒーローは、ロマンス小説にありがちな形だけのマフィアヒーローではなく、 ガチなマフィアです。骨の髄までマフィアで、傲慢でろくでなしで、残酷さを持ち合わせていて、ゾッとさせられる場面もあって、父親に忠誠を誓っていて、人生に冷めていて、妙なリアリティを感じさせられるところがあり、そんな男がラストではヒロインに恋して、パンケーキの行列に並ぶのです。
わかる人にしかわからないツボがあって、L.Jさんは、ホントにワルが好きなんだな〜♡

そして、海外ファンのレビューによく書かれていることなのですが、LJさんの作風は、『リリカル』。叙情的。なので、文学作品が好きな人にも、意外と、相性が良いかも。

ちなみに、洋書で読んだときにはヒーローのスラングだらけの悪党っぽいセリフにドキドキしたのですが、邦訳ではハーレクイン小説のヒーロー風になってしまっていました。この作品の魅力の中心はヒーローの悪党ぶりなので、悪党っぽい口調で話してほしかったのだけど、日本語に置き換えることは難しいのでしょうね。。。スラングと日本語のリズムも違いますし。
邦訳のセリフにリアリティを求めると、ヤクザ小説みたいになっちゃってロマンスファンの受けが悪いのでしょうし、かと言って、海外ロマンス小説ちっくな訳にしてしまうと、ヒストリカルロマンスのヒーローみたいに紳士になっちゃって、ストーリーとの乖離に違和感が生じてしまうでしょうし。
でも、たとえば、ラストで、ヒロインの前に現れたヒーローが「やあ」と言うところは、マフィアならば「よお」と言ってほしい…。

でも、とにかく、1作でも翻訳していただいたことが、とても、ありがたく、嬉しいです…♡
L.Jシェンの独特の世界観にご興味を持たれた方はぜひ、次は、『Vicios』から始まる糖度高めのロマンス小説へ…!

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Bane (L.J.Shen)

Sinners of Saint #4

1作目の『Vicious』を読み始めた瞬間から、L.J.Shen作品にハマっています。
正直なところ、Viciousが凄すぎたので、1作目を超えるものはもう出てこないだろうと思っておりました!けど、違いました!
Goodreads やAmazonの評価が異常に高かったので、我慢できず、シリーズ2・3作目を飛ばして4作目のこの作品の冒頭を試しに読み始めましたら、一気に引き込まれてしまって、ラストまで読み切ってしまいました。さすが高評価作品!面白くて切なくて楽しくてHOTで、文句なしのロマンス小説でした!
L.J.Shenさんの文章はあいかわらず読みにくくて大変でしたが、それでも読み続けられる吸引力があるヒーローと、今回はヒロインも素敵でした。1作目(Vicious)を読んだときには、慣れない単語がいっぱいでしたが、ようやく見慣れてきたような気がします(けれどまだ読みづらかった…。わからない所は辞書で調べながら読みました。読み終えるまでにかかった時間は、Viciousの時と全く同じ13.5時間!)。
あらすじと感想メモは下部へ。

読書期間:2019/09/05~2019/09/13
所要時間:13.5時間
ページ数:354


【ネタバレを含むあらすじと感想メモ】
金持ちぼんぼん男子4人組(Four HotHoll)がそれぞれヒーローとなるシリーズなのかと思っていたけれど、この4作目(厳密には、短編とあわせると5作目)のヒーローは違いました。
Roman Protsenko(通称Bane)はレイプにより産まれた過去をもち、プロサーファーで、男娼で、マリファナの売人でペテン師で盗人でスリで前科があり、全身にタトゥーを入れていて、(ある部分にはピアスもしていて)、悪名高い男。腕力でDefy(ファイト・クラブ・ゲーム)を潰したので「Bane」と呼ばれるようになった。
ロミオ役のレオナルド・ディカプリオ(水槽のシーン)のような超美男子だという描写があるし、街のミセスたちがこぞって肉体関係を迫りたくなるほどの美貌と肉体の持ち主のようです。
※「bane」の意味は、英辞郎によると、①致命傷、破滅、死、②死[破壊・破滅・苦しみ・悩み]の元[原因]③毒◆【用法】通例cowbane, bugbaneのように有毒植物の名前などを表す複合語として用いられる。

Baneは、5年間、40代の富裕層の人妻たちに体を売ってビジネスの後援をしてもらったり、必要であれば男にも体を売ってきたことで財を築き、25歳の現在、カフェやサーフィングッズショップ等を手にしています。
今回、ビジネスの件で呼び出された交渉の場で、Darren Morgansenという資産家から、「巨額の融資をする代わりに義娘(集団レイプ被害者、19歳)の引きこもりを治してほしい(が、性的関係を結んではならない)」という提案をされ、半年間の契約を結んでしまいました。

ヒロインJesseはこの街の大半の人間と同じく富裕層に属して派手な生活をしてしたが、集団レイプ被害に遭ってからは、人目を避けて一人孤独に生活をしていました。犯人の少年たちは富裕層だったために事件はもみ消されたままでした。

Baneは当初、Jesseを自分の所有するカフェで働かせて友人を作らせ、遠くから見守るだけのつもりでした。
しかし、Jesseに会ってみたら、それは数年前にBaneが一目惚れした女性だったから、見守るだけでは済まなくなってしまったのでした、さすが、BadAssAlpha!というお話。

手を出したいのに出してはいけないという禁断の恋。
しかも、JesseのほうもBaneにひと目ぼれしたようで、レイプによるトラウマを徐々に克服していくにつれて、Baneに対して積極的に好意(行為)を求めるようになっていきます。けれどBaneはJesseの誘いに乗ってはいけないし、真相を明かすわけにもいかない。(融資金はすでに使ってしまった。)だからJesseの誘いを拒みます。
拒まれたJesseは、過激な方法でBaneを誘います。そうです、Jesseはレイプ被害に遭う前はとても明るく積極的な女の子だったです。トラウマを癒やしてあげたことで、それを引き出してしまったのがBaneだという皮肉。
惹かれ合うのに触れてはいけない、というぎりぎりのラインで(さまざまな場所で)HOTシーン未満が繰り広げられます。(L.J.ShenさんはHOTシーンの設定も描写もお上手ですね。)
Jesseの20歳の誕生日の夜に部屋に上がってプレゼントをするシーンはとてもロマンチックで素敵!
(エピローグの21歳の誕生日はもっと素敵!)

以上のように、ストーリーラインはシンプルなものだけど、互いに惹かれ合う過程や心の傷とそれを克服する過程が丁寧に、しかもリズミカルに描かれているおかげで重たくなく、ポップな音楽のように進んでいくので、読むのを止められませんでした。(L.J.Shen作品には曲のリストもついているので、聴きながら読みたいです。)
しかも、シンプルなストーリーだと思って読み進めていったら、ラストに近づいていくにつれて、そうじゃなかったことが判明するんです。それがまた素晴らしいと思いました。サスペンス要素ゼロなのに、サスペンスよりも引き込まれる展開が待ち受けていたのです。(この辺りは大きなネタバレになるのでここでは割愛します。)
集団レイプ被害のトラウマを乗り越えていく過程で、もうひとつ別の被害を受けていたことを思い出します。それにより明らかになる家族関係の歪み。人間の本質と愛情の歪み。それらの真実と向き合うために、Jesseはひとりで立ち上がって闘います。
Baneは何度も手を差し伸べようとしますが、それを拒否して、自分ひとりで闘うことを選びます。それはBaneを信用していないのではなくて、自分の力を信じたいからなんです。
この作品の『プリンセスは自分で自分を救うのよ!』というメッセージが強く伝わってきます。
"The princess saves herself in this fairytale."
レイプ被害等に遭ったことがない私も、この本を読んである種の力をもらうことができました。
たぶん、皆、(たとえ自分では気づいていない場合でも)何かしらのトラウマをもっていて、それに立ち向かって乗り越えることができるのは自分だけなのだと。そういうメッセージが込められている作品だと思いました。
(ところで2018~2019年の洋書ロマンス界は、ヒロインがレイプ被害者という設定の作品が多く発表されて高く評価されているような気がします。RITA賞受賞作もそうだったような…。声をあげよう!という風潮にマッチするからかな。)
JesseはBaneに依存するのではなく、金銭的にも精神的にも、助けてもらうのでもなく、ひとりで立ち上がって過去と向き合い、警察に行って真相を告白して訴えたヒロイン。これこそ、現代のロマンス小説だと思います。
レイプ加害者たちの面割りのシーンでは、BaneはJesseからすこし離れてみているだけでした。
加害者たちを殺すか、そうでなくてもぶちのめすんだろうなと思って読んでいましたが、違ったので、また新鮮な驚きで感動しました。離れたところから見守っているだけ。もし剣が必要になったら渡すという役割。こういうポジションは、イヴ&ロークのロークを思い出しました。女性が社会的に自立していく現代において、こういうロマンスは、読んでいてとても気持ちがいいです。

もちろん、Jesseの立ち直り方だけでなく、Baneの人格も、読んでいてとても気持ちが良かったです。最初は、全身タトゥーを入れているし、人を脅してばかりなので、とんでもない奴だという印象でしたが、全身のタトゥーには真面目な理由がありますし、Jesseに対するふるまいは意外にも紳士的ですし、お決まりの『冷たい雨に打たれながら許しを請うシーン』には、女心を掴まれます(笑)

1作目の『Vicious』はとんでもないAssholeでしたが(笑)、Baneはそれほどでもなかったです。自己肯定感の低さはあるけれど、それほど歪んでおらず、むしろとても健全で素直なヒーローでした。(Vicisouが凄すぎたので、ぬるくみえるだけかもしれませんが。)
表紙は黒っぽいけど、全然ダークではありません。甘いロマンス小説の定型から外れていないので、安心して読めました。ハピリーエバーアフターです。

ちなみに、この作品には、(私の頼りない記憶によると、)Viciousが2回登場しますので、Viciousのファンの方(←あまりいないかもしれませんが)は必読だと思います(*^^*)

このヒーローBaneのサイドストーリーは、『Scandalous』にも書かれているようなので、やはりこのシリーズは順番に読んだほうが良かったと思いました。(後日必ず読む予定♡)
このシリーズは必ず全部読みたい!

※ L.J. Shen作品は、『Vicious』から読むことをオススメしたいです。
良い意味でも悪い意味でも、ViciousにはL.J. Shen成分が濃縮されて詰まってるような気がするので^ ^
 
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Defy (L.J.Shen)

Sinners of Saint #0.5
とても面白かった!L.J.Shenさんの「Vicious」の続編です。
英語は相変わらず難しかったのだけど、「Vicious」で舞台や登場人物を把握したので、前作よりも読みやすく感じました。時々挟まれるコミカルな言葉にも反応できるようになりました。辞書はあまり使っていないのに、読めるようになる不思議。語学は『慣れ』だと言われることが多いけど本当なのですね。わからないまま読んで感覚で捉える、という状態に慣れました(笑)

読書期間:2019/09/03~2019/09/04
所要時間:5時間
ページ数:165

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【(備忘メモ)ネタバレを含むあらすじ】

舞台はカリフォルニアで最もリッチな街「Todos Santos」。(検索してみたら、とても美しい街でした)
Jaime(18歳)はこの街で最も裕福な家のご子息たちが通う高校で最もイケててワルいメンズ4人組「Four HotHoles」のうちのひとりで、学長の息子。

Melody(26歳)はその高校の女教師だけど、初日から学長(Jaimeの母)に嫌われており、今期で雇用契約を打ち切られることになった。しかも、デートサイトで連絡を取り合っていた男性がマザコンのダメ男だと判明した最悪なメールを受け取った瞬間、車庫に入れようとした車を高級車SUVにぶつけて凹ませてしまった。それは、Jamieの車だった。学長の息子の車を傷つけてしまったのでした。
教員としての仕事を失うことが確定しただけでなく、弁償するお金もなくて困っていたところに、Jamieは「おれがあんたの車にぶつけたんだ」と言う。そのかわりにFuckしようよ、と持ちかけてきました。というお話です。
短編なので、ヒロイン目線オンリーで話が進んでいきます。(エピローグ後に数ページだけヒーロー目線あり。)

8歳下のヒーローと女教師という禁断の関係の設定だけで、ロマンスとして面白いに決まっているのですが、それだけじゃなく、今作もヒーローのBadass Alphaぶりが見物(みもの)でした。Jamieは8歳下なのに、生徒なのに、Melodyよりも経験豊富で、モテモテで、裕福で、すべてにおいてうわてだという、このH/Hのバランス(力関係)がすごくいいんです。ありそうでないバランスなんです。「Vicious」もそうでしたが、このバランスを描ける作者さまは素晴らしいです。
しかも、文章が楽しいんです。前作の感想として、L.J.Shenさんの文章はそれほど上手いわけではないと書いてしまったのですが、今作を読んで、その点の感想を変更しました。上手いです!英語力がない自分には見たことがない文体だったのですが、慣れてきたら不思議と癖になる文体だなと思うようになってきました。作品の雰囲気と合っているという意味で、上手いです。セリフにもエッジが効いています。リズミカルな文体は、何度も読み返したくなります。

(ちなみに、癖というかアクのある作品って、一作目では良い印象と悪い印象を両方残すことが多いんです。そして、読後のレビューメモは悪い印象のほうに引きずられてしまうことが多い。けれど、それでも二作目を読んでみると、癖に慣れて、その作家さん独特の世界観の楽しみ方がわかってくるので、より深く楽しめるようになる。そういう意味で、新しい作家さんの作品を読むときは、読者側にもすこし努力が必要で、それによって楽しめる力がつくことで、作品の価値もあがる。作品の良さがわかるようになる。その課程を経て、読者は沼にまっさかさまに落ちていく。クセのある作品にはそんな傾向があって、私はそういう作品が好きです。)

Jamieは放課後の居残り中にMelodyを誘います。18歳の男子生徒なのに、Badass Alphaで生意気で、横柄で、色気むんむんで、向こう見ずで、アメフトの選手で美男子。だからMelodyは次第にその魅力にあがなうことができなくなります。
短編なのに、HOTシーンも充実しており、その描写もとても良くて引き込まれました。
ふたりは、卒業するまでという「期限付きで」関係をもつことを約束しますが、互いに惹かれ合うことを止められません。教室でガラス戸に壁ドンされたり、授業中にこっそりとスマホにメールが来たりという、禁断の関係なのに、日本の小説とは違ってさすが海外ロマンスです、明るいんです、雰囲気が。禁断の関係なのに、読み手としても楽しいから、なんでも許しちゃう。
短編だから、ヒーロー目線の心情描写がなく、そのため、ヒーローの葛藤についての描写はあっさりしていたけれど(そこは妄想でいくらでも膨らませることができて)、Badass Alphaなヒーローが、じつは○○○○○をしていたなんて。想いを告白するシーンには心がときめきました。こういうところ、この作家さんの上手いところだな~と思いました。
ワル4人組の犯罪行為にはまた驚かされましたが、勧善懲悪なオチとしてすっきりしました。こういうのもロマンス小説に必要だもの。サスペンス小説ではないから、軽いノリで勧善懲悪なカタルシスを楽しめました。
エピローグでは、2年後と6年後のふたりを垣間見ることができて大満足。
この作品は、一作目「Vicious」を読んだ方はぜひ読むことをおすすめします。いろいろつながっていて、「Vicious」の内容も膨らみを持つので。

私もミーハーな女学生たちみたいに、この4人組を追いかけたくなりました!
大好きなシリーズになりそうです!

Vicious (L.J.Shen)


Vicious (Sinners of Saint, #1)
なんてこと!また好みの作品に出会ってしまいました…!
(注:私の好みは一般的ではありません…)
最初の1行から心を掴まれ、ラストまでペースダウンすることなく読み切りました。

まず、英語の難易度については、私の洋書ロマンス読書史上最強に難しかったです。(クリスティン・アシュリー作品よりも読みづらかったです。)
文学的に難解というのではなく、スラングと流行語みたいな、辞書では太刀打ちできないフレーズが多く、文法も崩れていて、しかも一文が長かったりして。最初は調べながら読んでいたけれど、途中で辞書を手放して、雰囲気で意味をつかみながら読み進めました。それでも十分理解できて楽しめました。
文体フェチな自分にとって、文体が合わない作品を読み進めることは非常に困難なのですが、この作品に限っては、文体がどんなに合わなくても読みたいと思わせる魅力がありました。

正直なところ、小説としての完成度はそれほど高くないと思います。
最近ハマっているPepper WintersやTiffany Reiszの作品のような完成度(芸術性)には及んでおらず、深みもそれほどなく、感動するわけでもないです。それでも(海外レビューでも人気がうかがえるように)多数の読者を強力に引き込むこの作品の魅力はひとえに、ヒーローの人格にあると思います。女心のツボを突いてくるんです。なんだか、すごく萌えました。こんなヒーローは初めて!!!という驚きと新鮮さが、ラストまで勢いよく引っ張っていってくれました。こんなヒーローが描ける作者さま、すごい!(読み慣れてきたら、文体にも惹かれるようになりました。キレのある文章とセリフが楽しくて何度も読み返したくなります!癖のある文章は読み手にとっても癖になる(笑))

いったいどんなヒーローなの??
それは言葉で説明するのが難しいけれど、作者さまが自己紹介として「Bringing badass alphas to their knees since 2015」と仰ってるとおり、『Badass Alpha』(辞書的な意味:ちょっと危険な匂いがするクールでタフで傲慢でかっこいいアルファメイル)なんです。そして『Asshole』(辞書的な意味:嫌な奴。ろくでなし。バカ野郎等、傲慢な男に対して使う言葉)なんです。いい意味でも悪い意味でも、私がいままで読んだロマンス小説の中では多分ベストワンに輝く『Badass Alpha』だと思います。けれど、そんな彼が、後半では延々とヒロインに許しを請うところに、カタルシスがあるんです。いわゆる『土下座ヒーローもの』なんです(土下座はしませんでしたが)。
だから、プロットは最近流行(?)のトーチャード・ヒーローが、ヒロインに出会い愛を知って幸せになりました〜ハピリーエヴァーアフター♪という、よくあるロマンス小説の域を出ませんが、それがかえってよかったです。安心して楽しめました。
詳しいあらすじを、自分のための備忘のために、下部に詳しく書いておきますが、英語力が乏しい者によるメモなので信憑性がなく、しかもネタバレになりますので、この作品を読む予定の方は読まれないほうがいいと思います…。

読書期間:2019/08/28~2019/09/02
所要時間:13.5時間
ページ数:339

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【ネタバレを含むあらすじ】
Baron Spencer (ニックネームはVicious)は、カリフォルニアの富裕層一家のひとり息子。
Emillia LeBlancは、バージニアから来てViciousの家で住み込みの家政婦・庭師等として働く父母の娘で、妹は病気がち。
ストーリーは、ふたりが18歳のところから始まります。

カリフォルニア随一の富裕層が通う学校の中で、貧困層出身のEmilliaはいつもゴミのように避けられて粗末に扱われていた反面、Viciousは学内で一番イケてて派手なメンズのうちのひとりでした(4人組)。
そんなViciousはEmilliaをあからさまに嫌う態度を取り続けていました。
例えば、Emilliaが奨学金受給資格を得るための試験前日に数学の教科書を盗まれ、Viciousが盗んだかもしれないと思い(実際そうだった)、部屋に訪れたところに、Viciousはベッドの上で派手な女Geogiaとキスをしてイチャついて見せつけてきたりして、Emilliaの心だけじゃなくキャリアをも傷つけました。
EmilliaがDean(Viciousの友人)と付き合うことになったと知ったときは、Emilliaの妹(15歳。病気がち)にキスをした上で、Eimilliaにもキスを迫ったり、Deanと別れるように脅迫したり、家から出ていけと脅したりしました。おまえのことが嫌いだと言いながらも、互いに惹かれ合うものがあることに、互いが気づいていました。気づいていながら、それでもEmillliaに酷い態度をとりつづけるViciousは、EmilliaがViciousの仲間のひとりと付き合い肉体関係を持ったことを知ったときには、ついに、Emilliaを家から追い出してしまいました。
 
10年後、27歳になったEmilliaは、ニューヨークで妹の学費と薬代を稼ぐために働きづめの日々を送っていました。そこにVicious(投資会社の支社長となっていた)が現れ、過去の償いのために、自分の個人秘書として高額な報酬で雇うことを提案します。Viciousは相変わらず、傲慢で横柄で嫌な奴なのだけど、「おれはAssholeだった」と言って反省と好意を示し始めます。
Viciousに関わるとまた傷つくことになるとわかっていながら、Emilliaの心は彼に惹かれることを止められず、彼に対する不信感と欲望の間で心が揺れます。好きだけど、危険。だけど、惹かれる。しかも、彼が誘ってくる。

Viciousは遊び人だけど、本気で人と関わったことがないのでした。
「おれはデートはしない主義だ(デートというものをしたことがない)」と言うViciousをEmilliaがデートに連れて行くシーンのViciousは初々しくてキュンキュンしましたし、真冬の雨と雹に打たれながらEmilliaに謝罪をしつづけるViciousは濡れた捨て犬みたいに可愛くみえて萌えました。
後半は土下座ヒーローの見せ場です。一般的なロマンス小説では土下座ヒーローの土下座的ふるまい(または台詞)はほんの数行ですが、この作品の土下座的行動は長く続くので、読者としても大満足(笑)
 “I was an asshole."って何度も言うヒーローがかわいい。素直なんですよね。
(ラストでは、おれの額に「Asshole」っていうタトゥーをいれようと言ってEmilliaを笑わせたりします。かわいい。)
 
10年前と現在のストーリーが交互に並行して進んでいき、徐々に、ふたりの関係やViciousの過去の真相が明らかになっていきます。それによってふたりの愛の深さが浮き彫りになり、ロマンチックに色づいていくストーリーから目が離せませんでした。
じつはViciousは最初からEmilliaのことしか見えていなかったのです。けれど、幼少期から激しいDVを受けており心身ともに傷ついていたせいで、Emilliaに対して酷いことばかりしていたことが明らかになっていきます。(しかもDVの加害者とEmilliaの外見が似ていたとか。)
好きだからこそ、好きな相手には傷つきやすく脆くなり、傷ついたら、仕返しをしたくなる、という幼い男子が好きな子をいじめる心理と同じだからかわいい。
ロマンス小説でよくあるトーチャード・ヒーロー像とは違い、捻くれていて、冷酷で残忍な部分もあって、それでいて純粋で、壊れそうな脆さをもっていて、多面的な人格が妙にリアリティをもっていて、それが良かったのかもしれません。とにかく、ヒーローの人格が読者を惹きつける作品だと思いました。これは、ヒーローを愛でる作品です。作者さまの意図もそれがハッキリと現れているし、表紙からもそれが現れているような気がします。
酷いヒーローだけど、許せちゃうという不思議。

Viciousの家族に関する犯罪行為についてはちょっと驚きましたが、これはロマンス小説であってサスペンス小説ではないので、(ロマンス読者としては自動的に薄目で読むため)気になりませんでした。(この部分が気になってしまう方も多少いるかもしれない、という点で、邦訳されていない可能性もありそう…。)

ちなみに、ヒーローの行為はなかなか酷いけれど、それでも、ダーク系ロマンスではありません。そこまでの深みはないというか、恐ろしさや切なさは暗さはなく、典型的な明るいロマンス小説として安心して読めました。この読みやすさも、この作品の魅力のひとつだと思いました。

なお、作品全体を通して、日本の桜がモチーフになっているところも、日本人読者として、嬉しかったです。作者さまは日本がお好きのようで。
表紙のピンク色のお花は桜なんです。素敵。。。

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